Victory Games渾身の一人用戦術級ゲーム

概要

”アンブッシュ!”コンポーネント

 ”アンブッシュ!”は、今は亡きVictory Gamesが1983年に発売した一人用戦術級シミュレーションボードゲームで、1985年にはHobby Japanによる日本語ライセンス版も生産開始となりました
 今回、HJのタクテクス21号に掲載された紹介記事を読み返してみると、「1人で楽しむ”コンバット”の世界」とあり、ドラマ”コンバット!”をソリティアで再現するゲームという位置づけだったようです
 つまり、”コンバット!”をスーパーファミコンで再現した”サージェント・サンダース・コンバット!”をPCに移植した”プラトゥーン・リーダー”が”アンブッシュ!”と似ていると私が感じた(→該当ページ)のは当然かもしれません
 ですが、当時の私の印象は、AHの”戦闘指揮官”をソロプレイでできる!、みたいな感じだったと思います。まぁ、両方ご存知の方はお分かりでしょうが全くの別モンです。”アンブッシュ!”は1ユニット1名だし、キャンペーンプレイが基本だし、そのための分隊員成長システムがあるし、そもそも発売しているのが系列とはいえ別会社だし…

 ただ、"戦闘指揮官"シリーズの根幹を成す、「歩兵戦闘こそ戦場の華」というコンセプトをより掘り下げて再現することのできるシステムであるのは間違いないと思います。各個人の能力差に起因する携行可能な装備や実行可能な行動数の違いと、それに基づく結果の差異は、一定のリアリティを表現できているのではないでしょうか?

 母国アメリカで当時どれ程の評価を得ていたのか、今となっては知る由もありませんが、欧州戦線4シリーズ+太平洋戦線2シリーズが発売されたという事実は、それなりの人気ゲームであったことを窺わせますし、発売から30年を経た現在でもBoard Game Geekのサイトでフォーラムが盛り上がっていることも、それを裏付けていると思います


特徴

パラグラフブックとビュースリーブを用いた独特のソリティアシステム

ビュースリーブ

 ソリティアゲームでは、プレーヤーの選択した行動によって発生する様々なイベントをどうコントロールするかが問題で、敵との遭遇形態ががあまりに理不尽ではやる気が削がれます。ゲーム上、敵には適切な行動が望まれますが、自軍の意図を知るプレーヤー自身が、敵に最適な行動を選択させるのは簡単ではありません。こちらの意図を先回りできるのが最善ですが、それでは敵に有利過ぎるきらいがあります

ビュースリーブ2

 この解決策として”アンブッシュ!”は「パラグラフブック」と「ビュースリーブ」というデバイスを導入し、プレーヤーの考えに左右されない、ランダム性のある敵軍の行動を実現しました
 新しいヘクスに進入する度、イベントが発生するかをビュースリーブに入れたカードを参照して判定します。左の例では、ヘクスG4に進入したらパラグラフNo335を参照することになります

RPG要素を取り入れた分隊員成長システム

 ”アンブッシュ!”は基本的にキャンペーンプレイを前提にしており、任務をこなして戦功をあげた兵士の能力が向上するという、RPG様の成長システムを取り入れています。この点は”プラトゥーン・リーダー”と若干似ていますが、向上させる対象の隊員と能力はある程度プレーヤーが恣意的に選ぶことが可能です
 ただ、任務によっては難易度がかなり高いものもあり、死亡・除隊者ゼロで最後までたどり着くのはほぼ不可能です。登場する敵兵の能力がほぼ固定されているため、任務をやり直すのは興醒めであり、この辺が”プラトゥーン・リーダー”と異なる点と言えるでしょう

戦況の変化を反映するコンディションの移行

 1回でも通過したヘクスはそこで何が発生するかわかってしまうため、シナリオ中にゲームの奥行きが乏しくなるのは否めません
 これに対する解決策として、”アンブッシュ!”では「コンディション」というシステムによって戦況の変化を表現する手法を採っています。具体的には、ゲームの進行に伴って一定の条件が満たされると、ビュースリーブで参照するカードが入れ替わり、チェック済みのヘクスでも新たなイベントが発生するようになります
 このシステムにより、時間経過とともに自軍を取り巻く状況が変化し、敵味方とも新たな兵力の投入や上層部の指示変更などが行われるという、実際の戦場でも起こりうる事態の再現を図っています

敵の有無で異なるゲーム進行手順

 マップ上に敵が存在しない(=敵を視認できていない)場合、ゲームの進行手順は「オペレーション」と呼ばれる、移動→パラグラフチェックの繰り返しですが、パラグラフの指示などで一旦敵がマップ上に出現(「アクティブ化」)したら、有利・不利(先攻と後攻のような概念)と兵士の能力に応じて獲得できるターン(Max2ターン)を使用して様々な行動(「アクドイツ軍カードション」と呼ぶ)を実行する、「ラウンド」という手順に移行します
 ラウンド中の自分隊員のアクションはプレーヤーが自由に選択できますが、プレーヤーのコントロール下にない自軍や敵軍のアクションは、各々専用に用意されたカード(左図)の記載に従い、主にサイコロを振って決定、実行します